今夜君とダンスを

アイドルはいつだって天才だ

宇宙に行った7匹のライオン

そこには、初めて見る宇宙があった。

 

 


去年のうみまるで「宇宙に行ったライオン」の文字を見て固まった。やるの…?と思ってしまった。


正直な話、「宇宙に行ったライオン」はカバーするにはあまりに難曲だと思っていた。原曲のバンドイメージが強すぎる。バンドの為にあるかのような曲と言ってしまっても過言ではない程、曲を象徴するギターリフから始まりドラム、ベース、そしてボーカルと進んでいく流れのイメージが定着し切っている。そしてバンドがやるからこそ生まれる焦燥感や疾走感がある。

 

そのガチガチにバンドイメージが定着している曲を、ダンスを得意とするTravis Japanがやろうとしている。想像がつかなかった。
もう完成されている宇宙に対して、どう斬り込んでいくのか。そこに見える宇宙って、どんな景色なのか。

 

 
そうして、TDC初日に頭に銃弾を撃ち込まれる事になる。

 

 

イントロから頭に風穴が空いた。気付いたら撃ち抜かれていた、気付いたらもう穴空いてた、そんな感じ。バンドのイメージが〜…とかうんたらかんたら悩んでいた人を一撃で黙らせるフリ。固定観念をねじ伏せる表現力。もうすでにこの檻を壊したいと、現状を打破したいともがく若いライオン7匹が見える。

 
原曲はバンドということもあってバンドが創り出す1匹の大きなライオンがいるというイメージだったんだけど、同じフリの中で、それぞれがそれぞれのしがらみや葛藤を振り切るように表現して踊るTravis Japanに、7匹のライオンに、この曲の新しい顔を見た気がした。

 

  

「サーカス団のテントの隅 ライオンが 百獣の王の 檻を壊した」ここの松倉くんが凄い2018。去年のTDCからの感想も含めているので2018ですごめんなさい。もうライオン乗り移ってる。松倉くんすでに檻の外を見据え過ぎてる。もう精神的には檻壊してないか。それくらい野心抱いてる。

 
その松倉くんからの、しーくんの「調教師、ピエロから逃げ ライオンは 世界を見たいと 草原走り出した」〜元太くんの「遠くへ…」に差し掛かる箇所の振り付けが天才過ぎる。檻を壊してから逃げ出すライオンの疾走感、初めて目にする世界に対する羨望や不安、未知への期待をゆっくりとしたモーションでこれ以上ないほど表現している。

もう後方に追いかけてくる調教師もいない。

 

 

サビに入る。ライオンが草原を走り出したのが見えた。初めて目に映す世界が、初めて触れるものたちが楽しくて嬉しくて仕方ないのだと、7匹のライオンが歌い、踊る。檻の中にいるだけでは触れられなかったであろう世界の中で、触れたものを吸収しながらも、決して流されずに己を失わない、Travis Japanの姿が重なる。

 

「何も出来ない事以上に、何も知らない事を知った」「俺はこんなもんじゃねーと 涙を堪え叫んだ」

現状に満足することなく、がむしゃらに上を目指して走ることをやめない。

 


なんだこれ。これ、Travis Japanの歌だったっけ。そう思えてしまう程、くだらない固定観念はすっかりなくなっていた。

 

 

「もっと遠くへ遠くへ行けるよ」
「風が風であるように 俺が俺であるために」
「初めて見えた世界に 自分を重ね合わせんだ」
「強きプライドの為 プライドを捨てる時」
「俺はこんなもんじゃねーと 震える血が滾るんだ」

 

何回でも言う。これTravis Japanの歌だったっけ。いくつもの新しい世界を経験しながらそこに自分達の存在意義を見出して、また次の世界へ走っていくことをやめない。プライドの為にプライドを捨てる事も厭わない。こんなもんじゃないと血を滾らせて、静かにその時が来るのを待っている。

 

 

「限界なんか壊して」「遠くへ」
「限界なんか壊して」「遠くへ」
「限界なんか壊して」「遠くへ」

 

 

限界なんかもうないでしょって。泣いちゃうよ。

 

もう完成している曲の世界観にどう斬り込んでいくんだろうという馬鹿な考えをしていた数分前の自分に思いっきり飛び蹴りをかましたくなったin TDC。
原曲の世界観を壊すことなく、全く別の宇宙を創り上げている。全く別の宇宙の中で、未知なるすべてに期待と不安をぶつけている7人がいた。

  

Travis Japanがやるから意味があった。

この曲を選ぶ事もうみちゃんも凄いし、この曲を100パーセント表現するフリを作るしーくんも凄いし、これをやってのけるTravis Japanも凄い。もし私がジャニーズJr.だったら、この曲はまず選ばない。やれる自信がない。

 

 


凄いなと、無意識に口から出ていた。
同じ曲なのに、同じ曲じゃないみたいだった。
もはやカバーじゃなくて、自分たちのものにしてる。それが、凄すぎる。進んでいく先の宇宙という名の、未来が未確定な彼らだからこそ、この曲を飲み込んでしまえたんだろうなと思った。7人の人生の線が交わって、今のTravis Japanという一つの点が出来ている。葛藤や後悔を抱えながら、今Travis Japanが新たな宇宙へ進もうとしている事は誰の目にも明らかだと思う。CMも、主演舞台も、海外の大物アーティストとの共演も、自分たちのコンサートも。何一つ、今までの事が繋がっていないものなんてない。全部、彼らが積み上げてきた宇宙だ。

 

 


この夏も7匹のライオンに会いたい。
Travis Japanが創り上げた真っ新な宇宙の中で。

f:id:traxvisx9:20190607233518j:image