今夜君とダンスを

アイドルはいつだって天才だ

Sugarに見るTravis Japanの歌声解析

Summer Paradiseが終わった。

Travis Japanの2019年の夏が終わった。

 

色々感想は書きたいところですが、まずこれに触れずして今年の夏を終われない気がしたので。鉄は熱いうちに打て。
まず、改めて再確認したけど、Travis Japan歌うまくない?ということを広くお伝えしたい。いや、うまい。本当にうまい。めっっちゃうまい……と会う人会う人に同意を求めた夏だった。

Travis Japan、一人一人歌声の声質がバラバラで特徴的なのに、ユニゾンやハモりになるとパズルのピースが合うみたいに気持ちいい位にぴたっとハマる。そしてソロになるとちゃんと個性が立つ。これが一番分かりやすいのがSugarなんじゃないかと、今回の記事を書くに至る。

 

 

  • 松倉海斗

どちらかと言うとTravis Japanの中では地声が低い方に分類される。それなのにひとたび歌うとファルセットを使わずに声を太いまま出せる音域が一番広いのでは説。去年からの夢ハリの歌い出しや、今年のスキすぎて曲終わりのアレンジ然り。高音低音関係なく安定した声の太さが特徴的で、声が前じゃなくて上に出てる。喉を潰さない歌い方です。ボイトレを積んだ人に多いので、その努力ゆえの声質だと思っています。
「素気無い言葉と裏腹のKissに きっと深い意味はない」の部分。母音(a.i.u.e.o)をしっかり発音するので、低音続きのパートでもきちんと耳に残る松倉くんの声。サビの「言葉はいらない C'mon」では地声(言葉〜いらない)とファルセット(〜は〜)の切り替えがスムーズで綺麗。
歌っている側の感覚の話ですが、声を響かせる時に声が前方に抜けていくような発声方法で出す声をレッドボイス、一方で後頭部に向かって響かせるように発声することで出る声をブルーボイスと言います。簡単に言ってしまえば高音域を出す時にこの発声方法(ブルーボイス)になるのですが、松倉くんはブルーボイスでもレッドボイスでも操れる人なので、高音域でも芯のあるスパンと伸びた声が出せるし、低音域でも前ではなく上に発声できる人なんだろうなあと思っています。この、ある一定の高さの音に対してレッドボイスでもブルーボイスでも発声できる(操れる)人をユナイテッドボイスと呼ぶそうですが、松倉くんは意識的にこれを使い分けているというより感情の赴くままに歌うとこうなる、といった感じなので可能性が天井知らず。

 

 

宮近くんは地声の音域そのまま歌声に移行しているチェストボイス。これは鼻腔から喉にかけての空洞に音を響かせて発声する低音域の発声方法です。宮近くんは地声が低いながらもテンションが上がると高い声も出したりしているので、そこまで音が内側に籠らず響きやすい気がしています。
話し声と音域が似ている影響で、歌っているのに、どこか誰かに話しかけているような物語性を感じます。「饒舌な言い訳を嫌う君に」のパートも、ただ歌詞をなぞっているだけではなくてそこに「饒舌な言い訳」や「君」の具体性をうまく持たせていると言うか。地声と歌声の音域が似てるからこそ歌詞の持つ意味や含みを、聞き手に最大限に汲み取らせることが出来ているのではないかなと思います。
そんな宮近くんのパート「そんな駆け引きは月と 太陽に預けて ただ僕を見つめて」。これ宮近くんにしか歌えない。このパートを宮近くんに与えた人は誰ですか。天才ですか。ここのパートめちゃくちゃ難しい。音程にして1オクターブ分音が上がるのに加えて、大サビ前なので全体的にパートの終盤に向かって音量を上げていかなければならない。宮近くんは歌声を話し声に変換させる(そう聴き取らせる)のがうまいと書きましたが、台詞のように歌詞の単語一つ一つに意味を含ませる反面で、決してその曲のメロディアスさを失わせない所が宮近くんの強みだなと思います。それを両立できる人って、歌詞の意味を極限まで飲み込んで自分の中で咀嚼できている人です。

 

 

「月明かり 君は素敵に纏って 悔しいくらい上手に笑う」が天才すぎて2019年夏から抜け出せない。感覚的な話で申し訳ないのですが、元太くんの歌声は空気の含有量が多い。吐く息すべてを歌うことだけに使っている訳ではなく、歌う前、歌った後、あるいは歌っている途中にも「良い意味で余分な空気」を随所に含ませている気がします。この余分な空気は全く無駄ではなくて、声が途切れたあとの余韻であったり、声を出す前の雰囲気や色気を演出したりしている。含む空気が多いことで、歌声にプラスアルファ聴き手へ歌詞の意味に浸る「余白」を与える事ができる。例えば、紫煙を吐きながら喋る人が色っぽいのと同じように、目に見えないはずの空気まで音になって色づいているように聴こえるのは、元太くんの成せる技なのかなと感じます。
単純に声質の話をすると、Travis Japanの歌声はみんな違った種類で糖度が高いのですが、元太くんの歌声は人工甘味料じゃなくて天然由来成分の甘さに分類される気がする。チョコレートとかキャンディーとかじゃない、人知れず大自然の中で育った果実に似てるような。だから甘ったるい響きの歌を歌っても全然胸焼けしないし、めちゃくちゃ優しいから、すっと入ってくる。
それと、Sugarで母音をしっかり発音する松倉くんに対して元太くんは子音を当ててくる人かなと思ってるので、ハキハキ発音して歌うというよりは言葉の輪郭をうまくぼやかして歌ってる。それが崩れたように聞こえないのは、その音程の正確さと表現力を持ってして歌われているからかなと思っています。

 

 

しめちゃんの声って7人の中でも群を抜いてめちゃくちゃ不思議なんですよね。Travis Japan比で声に一番幅があるのでは。普段の声は低い方でありながら、声を張り上げると地声の音域も高くなる。なのにひとたび高音域を歌うと、甲高いキンキン声にならないのがしめちゃんの不思議であり凄い所。むしろ歌声になると人が変わったかのように、高い音程でもグッと落ち着いた印象になる。高い音程で抑えた歌い方ができる理由の一つに、松倉くんにも言えるのですが声の太さが挙げられます。しめちゃんも声を前ではなく上に出すように意識しているタイプではないかなと。だから声が金属的ではなく、高音であっても柔らかく落ち着いたイメージ。レッドボイスに見せかけたブルーボイスです。
「理性溶かしてくよ」パートが二回ともしめちゃんなんですが、ここ特に地声とファルセットの切り替えが早い。「理性溶〜」と「〜してくよ」は地声なんですが、その間の「か」だけがファルセットで歌うようになっていて、地声からファルセットに当てに行くのは割と簡単なんですけど、ファルセットから地声に当てに行くのは音感がないとなかなか難しい。けど、それを音程ズレなく容易に当てているのって物凄い才能だなと感じました。そんな難しい事を易々とやってのけながら、そこに自分の色気もきちんと足しているのは本当にさすがとしか言えない。

 

 

如恵留くんも元太くん同様、空気の含有量が多いタイプ。如恵留くんは歌い始めや歌い終わりに空気が多いと言うよりも歌詞の単語に含ませがちで、分かりやすいのは「物憂げなUpturned eyes 蔑みのCold eyes 翻弄されればされるほど No way out」の英単語箇所。英単語が入るのでその特有の発声から、そのテンポで単語をリズムよく切ってしまいがちになるかなと思うんですが、如恵留くんはそこに空気を入れる人なので単語の末尾が切れない。末尾が切れる事なく綺麗に余韻として残って、次の日本語詞に繋がるので流れるように耳に入ってくる気がします。あと単純に発音が綺麗で聴きやすい。
もう一つは、声の広がりが凄い。舞台経験値の高さから来るものなのか、どうやったら今出したい音が一番響くのかを考えながら歌っているような気がします。声が前に出る、上に出る、という話をしていましたがこれはあくまで歌っている本人の感覚の話で、聞いている側の話をすると、如恵留くんの発声は声が幅広く横に響く感覚。舞台の隅から隅まで、下手から上手まで、手前から奥まで平らに広がっているように聴こえる。
声が手前に飛んでいる如恵留くんは恐らくレッドボイス寄り。それなのにファルセットも癖がなくてめちゃくちゃ綺麗なのでずるいです。なんでも出来る人だなあ本当に。

 

 

しーくんはレッドボイスです。声が手前から前頭部にかけて伸びているイメージ。驚くのがその音程正確率なんですけど、7人の中でダントツで音を当てているのはしーくんかもしれない、とこの夏思いました。ミスヴァの時然り物凄い正確率。発声したい音に対して、少し手前の音から開始してその音に徐々に合わせに行くんではなくて、一発でその音にスコーンと当ててしまう。「君の渦 飲まれてく Prisoner」も後にハモりで重ねて来る松松との相性がとても良い。松松は割とブルーボイス寄りなのでその対比もあって物凄く綺麗に響く。
それと、この記事を書くにあたって一番言いたかった事は「のえしずのハモりが一級品」だという事です。Sugarのどこが一番好きかと言われたらこのハモリと答えてしまうかもしれないくらいには。この夏会った人会った人にそれをお伝えしていたくらいには。2人ともレッドボイスなんですが、声の飛び方がその音程正確率から縦に広がるイメージのしーくんと、響かせ方のプロで声が横に広がる如恵留くん。声の軸が縦と横なので、同じレッドボイスの中でもある意味対極に存在している2人の声質の相性がズバ抜けて良い。決して相手を邪魔しないし、お互いの声を引き立たせ合っている気がして、個人的にはこの2人のハモリを今後も推していきたい所存です。ハモリも綺麗だけど、この2人のユニゾンはきっととっても綺麗なはず。

 

 

今回のSugarで一番印象が変わったのがうみちゃんかもしれない。地声が低めで落ち着いた響きで、ラップの影響もあって低音を得意とする印象が強かったのですが、癖のないファルセットでユニゾンパートでも声馴染みが良く、めちゃくちゃ綺麗に映えます。特に「いつかは2人も 星屑になるの」の真っ直ぐで綺麗な高音が歌詞の切なさを引き立てていて、低音でも高音でも網羅してしまうの、単純に凄いなと感じました。Travis Japan全員に言えることですけど、音域めちゃくちゃ広いです。
歌い出しのフェイク部分「Hey yeah, my Sugar」「Oh Baby」ですが、声に芯を残しながらも末尾をウィスパーで歌っているのがとても良い。この曲の雰囲気とうみちゃんの持ち味である低音ボイスがこれ以上ない程合っている。ファルセットで歌っている時に割と声が上ではなく前に向かって伸びている印象である事から、うみちゃんもレッドボイスかなと思ったんですけど、反対に低音を歌う時には声が上に抜けているような出し方をするんですよね。前に吐くんじゃなくて、頭に響かせてるような歌い方。この事からうみちゃんもブルーボイス寄りなのかと思い始めて、現在迷走しています。うみちゃんが一番分からない。どちらにも属す事が出来るんでしょうけど、この掴み所のない歌声が魅力です。

 

 


ということでTravis Japan7人の歌声を、縦軸レッドボイス・ブルーボイス、横軸地声の高さとして十字グラフに表した結果が以下です。

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こう見るととてもバランス良いのかもしれない。レッド3人、ブルー3人、中間1人。Travis Japanの歌の良さ、ユニゾンもハモリもとてつもなく綺麗だという事がもっと世の中に広まれば良いのにと思った夏でした。(なお、この解析は大体主観に過ぎませんのでご了承下さい。)

 

 

 

Travis JapanのSugarが後世に残らないなんて日本の損失なので、少クラに要望出してきます。