今夜君とダンスを

アイドルはいつだって天才だ

虎者に見るTravis Japanの歌声解析

Travis Japanの歌が大好き星人。

 

夏にこんなブログを書きました。

Sugarに見るTravis Japanの歌声解析 - 今夜君とダンスを

書いててとても楽しかったのと、また別の機会があれば今度は一人一人の話じゃなくて組み合わせについて書きたいなと思ってうずうずしていました。前書きはどうでもいいので行ってみよう。レッツ、歌声解析〜!第2弾!

 


①千年メドレー

宮近海斗×松田元

 千年メドレーのちゃかげんはここに尽きる大賞受賞。この二人、とてつもなく声の相性が良かったことをこの秋に再確認した。千年メドレー「ひそかに震えてる仮面をつけたまま光の裏側の怪しさに巻き込まれて」のオクターブユニゾン。えげつない程綺麗。あまりの綺麗さに血液が沸騰するのを感じる。ちゃかげんがやっているのは正確には和音を重ねる「ハモリ(代表的なものだと3度ハモリと言って、主旋律から上下2音ずつズレます)」ではなくて「ユニゾン」で、オクターブ隔てて同じ旋律を歌っているのでその中でも「オクターブユニゾン」と呼ばれるもの。

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同じ旋律を歌うだけと思いきや、実はオクターブユニゾンってめちゃくちゃ難しい。ただでさえユニゾンは声の出し方、歌い方や節回しの癖、音量、ブレスの位置、余韻の長さそれぞれ全部揃えないと同じ旋律を歌っていてもどちらかが浮いて聴こえるし耳触りが悪くなって、声が「合ってない」ことにもなり得る。しかも今回やっているのはオクターブユニゾンなので誤魔化しが効かない。

主旋律を歌う元太くんにオクターブ高い音を当てて歌っているちゃかちゃんですが、めちゃくちゃ高難度な事をやっている気がする。まずオクターブ高いユニゾンを当てる目的はあえて高音域を補う事で主旋律を際立たせることや、音の厚みを持たせるためなのですが、下手をするとこれがかえって主旋律の邪魔をしかねない。けれど、ちゃかちゃんの声は音量から元太くんの声への添わせ方まで全てが適切で、それがすごく「元太くんの声をよく聴いて発声している」からだと分かる歌い方なんです。

引き過ぎても駄目、出し過ぎても駄目。オクターブユニゾンの難しい所は「声の相性」に尽きるのですが、元々の声質の相性の良さに加えて、双方が相手の声に沿ってきちんと合わせられる力量を十分に兼ね備えているからなんだなと感じました。なんかさらっとやられ過ぎて気づきにくいけれど。

元太くんの声が甘めで空気の含有量が多いというのはこの夏のサマパラのブログでも書いたんですけど、ちゃかちゃんは甘い声特有の人の声の落とし方(低い音に下がる時に吐息を含んで落とす)をめちゃくちゃ理解していて、それに合うようなオクターブユニゾンで立ち向かっているので、ちゃかげんのパートを聴いた時に言葉に表せないような「しっくり感」が生まれている、と思うのです。

余談ですが、千年メドレーの松倉くんは声量の鬼。バババ〜の後のフェイクが天才的。絶妙にがなりが混ぜられた歌声に、センスと努力の狭間を垣間見る気がして痺れる。ただ低音を出すだけでも、声の線が太いのでがなり向きな松と、角砂糖がじゅわーっと溶けるように耳なじみの良い低音を出せる松。松松は声の融点が違うという余談でした。

  

②Free your mind

松倉海斗×宮近海斗×松田元
ソロで歌ってると3人の声質の特徴バラバラなのにサビでユニゾンになるとまとまり良く聞こえるのなんで?マジック?と混乱する曲。声馴染みが良すぎる。以前書いた通り、チェストボイスのちゃかちゃん。身体のどこで空気を震わせて発声しているかなんですが、チェストボイスなので鼻腔から喉にかけての空洞に声を適度に響かせている。これがちょうどいい。ちゃかちゃんは声の輪郭がぼやける(甘ったるくて内側に響く)方に偏る事もなく、かと言って太くてハリがあり過ぎる(手前にパーン!と飛ぶような)方に偏る事もない、いわばこの3人の中で一番バランスの取れた、中立の声を出せる人です。この声を主軸に松松の相反する声の関係性を考えていきます。

まず、音には「倍音」と言われるものがあります。ある一定の音が鳴っているとして、例えばそれを「ド」とします。楽器を使ってドの音を出せば、人間の耳には間違いなくドの音が聞こえますが、実はこの鳴っているドの音を詳しく解析していくと、ド以外の音も鳴っている。鳴らしている音よりももっと高い周波数を持った音が交ざりながら人間の耳には届いているそうです。出そうとしてる音が基音、それ以外の周波数が倍音です。基本的に倍音を含まない音はないと言われているほど、どんな音でもこの話は当てはまります。この図で言うオレンジ色が基音(耳に聞こえている音)、緑色が倍音です。

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何が言いたいのかというと、人間の声にも勿論倍音は存在していて、どういう声が倍音が多いものかと言うと「輪郭のはっきりした鋭い声」。明るくて、外側や手前にパーン!と飛んで、声の輪郭が太い、スッキリはっきり線引きできる。3人の中でいうと、まさに松倉くんです。対して、倍音をあまり多く含まない声は「声の輪郭がうまくぼやける、甘くて丸い、内側に響く」ように聴こえます。3人の中では元太くんです。3人比で倍音を多く含む松倉くん、倍音をあまり含まない元太くん、そして双方バランスよく取り入れている中間のちゃかちゃん。この3人が同じ音を狙って出したとして、倍音の含まれ方が3人とも異なるせいで同じ旋律を歌うとバラけて聴こえそうですが、そうも聴こえない。むしろ3人の声がまとまって聴こえるのは倍音を持つメンバーがバランスよく居るからかなと。

オーケストラの話に例えるとして、倍音を多く含むシンバルばかりだと、基音の他に倍音が鳴りすぎて、音が定まらなくてそもそもの基音(出そうとしている音)が分からない。かと言って倍音をあまり含まないようなフルートばかりで演奏しても、輪郭もはっきりしなくて、ぼやけた印象になる。大切なのは倍音のレベルを揃える事ではなくて、倍音を多く持つもの、あまり持たないもののバランスなんじゃないかと思います。

つまり紅孔雀で言うと、松倉くんが倍音7、ちゃかちゃんが5、元太くんが3のイメージで、3人の声の倍音のバランスがちょうどクレッシェンドみたいな関係性なので、オーケストラで演奏しているような、とてもバランスが取れてまとまった声に聴こえる。楽器一つ一つが鳴ってても勿論素敵ですが、合奏するとより素敵になるのと同じように、3人の声質はバラバラなのにユニゾンになると何故かまとまった声に聴こえる理由は、これだと思っています。倍音バランスの話。

 

③Blue masquerade

川島如恵留×中村海人×七五三掛龍也×吉澤閑也
この4人の声の組み合わせもとても面白いなと思った。ブルーボイスとレッドボイスの対比が綺麗に二分している。のえしずがレッドボイス、しめちゃんがレッドに見せかけたブルー、うみちゃんの歌い方は技巧的で割とどちらにも転べそうという話をしたんですが、Blue masqueradeのうみちゃんは間違いなくブルーボイスの発声。なのでちょうど2人ずつに分かれておりバランスが良い。

何故今回のうみちゃんがブルーボイスだと感じたかについては、1番のソロパート「まだ目が醒めない」が決め手でした。この歌詞を母音にした時に「あ-あ-え-あ-あ-え-あ-い」となっていて、殆どaの音を使ったパートです。通常、口を大きく開けたaの音を発声しようとする時、どうしても人の声は手前に向かって飛びがちです。ですが、うみちゃんは声が手前に飛ばない。場所のイメージで言うと後頭部に向かって自身の声を引き上げている発声方法をしているように聴こえます。声を引き上げて歌うことで、頭の後ろ部分で空気を振動させて発声する事ができて、柔らかかったり、甘くて優しかったり、という印象を与える事に繋がります。(声の大きさとはまた違う話で、声が大きければ手前に飛んでる、小さければ飛んでないという事ではないのでとても判断は難しいですが。)

もう一人ブルーボイスなのがしめちゃん。しっかりと真上に向かって声が出ていて、きちんと自分の声の響きを頭の中で確認しながら歌っているように聞こえます。それなのにブルーボイス特有の輪郭が丸みを帯びた柔らかい声の中に、しっかりとした芯が感じられるのは声の太さ所以。その芯の揺らがなさがレッドボイスと勘違いしてしまいがちな点かと。それと、しめちゃん要所要所のビブラートが桁外れにうまい。うまいビブラートって、音が途切れない、音の揺れる幅が一定、音の揺れる速さが一定、である事なんですが、完全にこの3つを網羅している。ビブラートってある程度フレーズの語尾が伸ばせる場所でないとかけづらいと思うのですが、例え短いフレーズであっても漏れなく安定したビブラートをかけて来る恐ろしい程の力量。「まるで迷路さ」の「さ」にもビブラートかけてる。すぐ次のフレーズ来るのに、ブレスもしなきゃいけないのに、ビブラートかけてる。そしてそれが決しておざなりになっていなくて、聞こえ方が緻密に計算されたであろう綺麗な音の揺れになっているので凄い。

 
対してレッドボイスの二人、如恵留くんとしーくん。夏にもこの二人の声の相性の良さについて書いたばかりでした。

その舞台経験の多さからどのように声を出せば最後列まで声が響くかを熟知している如恵留くんと、音程正確率が驚異的に高いしーくんでは同じレッドボイスという枠組みの中でも全く違う存在。対極に位置しています。どういうことかと言うと、声の広がり方を3Dで可視化した時に、横軸を中心に声が平たく、劇場の隅まで広がる如恵留くんと、その音程正確率から、出したい音に対して声を縦軸で発声し、ピンポイントに当てに行けるしーくんは、完全に正反対の場所に立っているようなものなので、声の種類は違うものの合わさった時にちょうど声が縦と横で球体になるイメージ。だからこの二人がユニゾンやハモリをした時の相性の良さが凄い。

 全く同じ音程のソロパート、如恵留くんの「日が昇り始て」、うみちゃんの「終わり行くMy Night Day」、しーくんの「そこにある現実え」ですが、この対比が凄い2019。語尾から数えて2つ目の音、音程が下がるところがありますが(色を変えている箇所)、たった一人なのに奥域や空間の広さを感じさせるほど伸びやかな如恵留くん、音を内側に籠らせるので幻想的かつストーリー性を持つうみちゃん、ウィスパーボイスで声の芯をうまく抜いてるしーくん。そして、レッド、ブルー、レッドと声質の波が綺麗に出来たところに「壊したくなる」で芯のあるブルーボイスを炸裂させるしめちゃんという、あまりにも出来過ぎた歌い順です。

そんな4人のファルセットでのユニゾン(サビ)は各々の個性が生きたまま複雑に絡み合っているので、碧鷺の影のある印象にものすごく合っている。ぴったりと声質が似ている者同士でないからこそ為せるユニゾンです。

 

 

Travis Japan、一人一人の歌声がとても個性的なのに、組み合わせ次第でさらに色んな表情が見られるので楽しい。毎回にはなりますがあくまで主観でしかありませんのでご容赦下さい。

愛のかたまりもずーっと書いてみたい気持ちはあるのですが、もう頭が追いつかないのでそれはまた今度気が向いたら書きたいです…。愛のかたまりでの元太くんの後頭部の丸みと髪のサラサラ感を、如恵留くんの手を通して感じ取っています(共感を得ない感情)。

 

レッツ!円盤化&少クラ披露!(要望)

ご静聴ありがとうございました。